(3)不登校生徒の心理的自立・社会的スキルの変化
ペア運動による不登校生徒の心理的自立・社会的スキルの変化
不登校生徒には、対人関係のトラブルや葛藤などを解決するための社会的スキルや心理的自立の発達の未熟さが指摘されている。元気学園では、不登校生徒の日常生活に、生徒同士の相互支援による運動を組み込み、学校復帰に成果を上げている。
そこで、入学から6か月間の社会的スキルと心理的自立の変化を追跡することで、不登校生徒の心理的・社会的機能の向上に及ぼす影響と、発達の遅れを取り戻す効果について、大学と共同研究を行い、検討した。
不登校の心理的自立の変化
将来志向、適切な対人関係、責任の因子は6か月で有意に向上した。
すなわち、現在の自分の状態を把握して将来を考えて、努力すること、自らの意思で決断したことに責任をとること、周囲の人と協調して、他者と適当にかかわることなど、主に、行動的・情緒的な自立が高まっていた。
これには、生活場面で、多くの体験と、達成することの教え合いや助け合いによる相互支援体験が影響していると考えられる。
不登校の社会的スキルの変化
高度なスキルと、攻撃に代るスキルの因子が有意に向上した。すなわち、相手とのかかわりで、参加や指示、謝罪など、自己主張や自己抑制をバランスよく用いながら、問題解決やトラブル処理、あるいは支援を行うような社会的スキルが高まっていた。
心理的自立の対人関係の向上を踏まえると、相互支援により、自分を抑制することでの対人関係のスキルを向上させることができるようになったと考えられる。
一般の高校生と心理的自立の比較
入学時には、一般の高校生(530名男女)に対し、6因子中、4因子(将来志向、適切な対人関係、価値判断・実行、責任)が有意に低かった。6か月後には、入学時に比べて、すべての因子で上昇がみられ、特に、将来志向の向上が著しく、総合的に、心理的自立が高まっていると考えられる。
一般高校生と社会的スキルの比較
一般の高校生との比較では、入学時では、6因子中、5因子(初歩的スキル、高度なスキル、感情処理のスキル、攻撃に代るスキル、ストレスを処理するスキル)が有意に低い。
6か月後には、入学時に比べて、すべての因子が上昇し、社会的スキルの向上がみられる。特に、初歩的スキル、攻撃に代わるスキル、ストレスを処理するスキルでは、一般の高校生との差が有意に短縮している。
社会的支援行動を伴う日常の豊かな運動体験は、社会的スキルの発達の改善に貢献していると考えられる。

![]() (2)不登校の心臓や自律神経系の変化、うつ状態 |
![]() (4)中学・高校の不登校の人数とニートとの関係 |