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(2)不登校の心臓や自律神経系の変化、うつ状態

不登校の原因、もしかしたら、心臓かも?

日本大学との共同研究の結果、ピアサポートによる運動療法により、心臓ポンプの増強、自律神経活動のバランスの改善がみられた。また、一般高校生530人男女とうつ状態を比較すると、入学時に高かったうつ状態は、3か月後には、一般高校生と同レベルまで低減した。

日常生活の中に、ピアサポートによる身体活動を取り入れることは、不登校生徒の循環器系の向上をもたらし、同時に心理的変化でもある、抑うつ傾向や社会的不適応状態を改善し、さらに、ポジティブな気分を引き起こす。

子どもたちの声の中で大きいのが、「朝起きるのが楽になった」「夜、早く眠くなる」「ベッドに入っても以前はなかなか眠れなかったのに、すぐに眠れるようになった」「夜、熟睡している」という睡眠と目覚めの変化である。
昼間の変化としては、「お腹がすくのでたくさんご飯を食べるようになった」「食べ物の好き嫌いが減った」「運動が楽になってきた」「勉強中、集中できる時間が伸びた」「ちょっとのことで、いらいらしなくなった」という声がきかれる。
これらより、生活の質が向上していることがわかる。

心拍数と健康状態の関係

元気学園入学後、1ヶ月で、立位も仰臥位(寝た状態)も両方の心拍数が減っているのが、左図からわかる。同時に、医療検査の結果、心臓を打つ力が強くなっていた。
運動療法の結果、心臓のポンプの力が増強された。
疲労や不健康な状態の時、心拍数は増え、ポンプの力が弱まり、循環が悪くなることが知られている。この結果は、それとは、逆の現象であり、循環器系の大きな改善が見られる。

不登校の自律神経系のバランス

左の図は、入学後6か月間の自律神経活動の変化を表したものである。副交感神経の働きを示すHFは、減少傾向にあり、それは、副交感神経の働きが良好になっていることを示している。交感神経の働きを示すLF/HFは、上昇傾向にあり、これは、交感神経の働きが良好になっていることを示している。
この結果から、自律神経系のバランスが改善しており、生活の中に取り入れられた運動刺激に対して、循環器機能はすぐに適応・向上している。これにともない、生活機能の改善も推測される。

不登校のうつ状態を一般高校生と比較

うつ状態を調べたところ、3か月後、6か月後でうつ状態のはっきりとした低下がみられた。一般の高校生(530名)と比較すると、入学時のうつ傾向は、有意に高い。
しかし、3か月後には、有意なさが認められないため、入学3か月後には、一般高校生レベルまでうつ傾向が低減していることが明らかとなった。

これらのことから、生活習慣改善にも影響する豊かな運動行動は、心臓のポンプ作用を強化し、自律神経活動の向上を促進する。その心理的な影響としては、ポジティブな気分を生起し、うつ状態の改善に貢献している。
これらのことから、身体運動による心理的恩恵に加えて、運動実践での仲間との相互援助体験により、社会性機能向上が相乗して、心理的・社会的不適応状態を改善していることが考えられる。

自律神経とは:

自分の意志とは無関係に、血管や心臓、胃腸、膀胱、ホルモン、汗、唾液などを支配し、体を自動的に調節する神経。交感神経と副交感神経があり、アクセルとブレーキとの関係で働く。交感神経は、闘いの神経ともいわれ、闘いの前の緊張した状態になる。一方、副交感神経は癒しの神経といわれ、リラックスした状態をつくりだす。これら二つの神経のバランスが崩れると不調がおこる。


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